実践!:アイゼン登攀トレーニング

前日、九州さんらく会下期総会で皆の楽しくも真剣な熱い議論。 好みや山行スタイルは様々なれど、改めて「みんな山が好きなんだなぁ〜♪」と感じさせられるひと時でした。

一夜明けて大分くじゅうから場所を熊本に場所を移し、本日は阿蘇山に向かいました。 山行内容は諸事情で中止となった東峰縦走組とアイトレチームの混合編成。 アイトレと聞いて、以前冬季遠征のアイゼンボッカ歩行トレにボッカのみで参加した時のイメージがありました。 しかし、今回は冬季アイゼン登攀トレ...

皆は口々に「白ネコ」って言ってるケド、そりゃ何なんでしょうか?? 山頂に近づくにつれ、白ネコちゃんのすばらしい景色を目の当たりにするのでした。 そしてまた、その険しさ、厳しさ、暖かさにふれる山行となりました。

山行概要

 2009年12月6日 実施 チャー(CL)、みっちぃ(SL)、ミカン、ひな、ワタスゲ、Pooh(レポート) 6名
 阿蘇 根子岳
  阿蘇山系 熊本県
 
 8時、ヤカタガウド登山口より林道を登り、堰堤を越え沢沿いに縦走路を目指す。
 天狗のコルから天狗峰へ登攀。その先は現場の状況など総合的に判断して決定。
 特徴
 (1) 天狗のコルまでは一般的な登山道。ただし、ガレ場あり。
 (2) 天狗の岩場は、雪が付いていなければ難易度は低いが一般岩登り装備必須。
 (3) 根子岳ピークまでは狭い縦走路。一部いやらしい岩場あり。
 (4) 天狗峰まではミヤマキリシマに囲まれたナイフエッジの狭い縦走路。
 (5) 天狗峰からローソク岩方向は高度感あふれる本格的な岩場。

山行の様子

撮影した画像で山行の雰囲気を紹介します。
なお、今回のルートは積雪がなくても登攀装備と経験が無いと行く事はできません。

最初は林道歩きです。車が一台ぎりぎりで上がれる道幅です。

初めて共同装備のザイルを一本持つように指示されました。ちょっと大人になった気分です♪

昔だったら自分の装備以外に結構重量のあるザイル持ってと言われたらえェーっ!となった事でしょう。 でも今は大丈夫。先週のなんちゃって里山短距離27Kgボッカ(歩荷)トレのお陰で平気です♪


途中にある看板の注意書きです。
今回のコースでハイキング装備で行く事ができるのは天狗のコルまでです。

無雪期の東峰方面は行ったこと無いので不明です。


枯れ沢沿いの登山道です。テープなどはあまり見かけませんでしたが要所に案内がありました。

道迷いの心配は少ないですが、ガレ場なので落石には注意して進みましょう。


小休止です。皆さん余裕です。

いつもだと滝のように汗をかき冷えて寒くなるのですが、ダイエットが効いているのか大丈夫です。

また先週、先々週のトレーニングのお陰か、体調は良い様です。当会一鈍足のワタシですが、何とかついて行けてます。 やはり、トレーニングは裏切りませんネ♪


岩場の上部が崩落してなくなっているそうです。つい最近の出来事だそうで。 このままではめがね状でなくなったので愛称を変更しないといけないですね。

取れた部分を発見された方は、瞬間接着剤でくっ付けておいて下さい(^^;;


天狗のコルに到着しました。

いつもは雪が降っていても汗びっしょりのワタシが暑くなく快適です。 結構風も吹いて体感温度はかなり低く、寒ささえ感じるほどです。
ひなさんはここで停滞を決断されました。 素晴らしい樹氷の中、手を振ってくれています。なるほど、コレが「白ネコ」なんですね。

ますます風は強くなり、ミカンさん、ワタスゲさん、ワタシの3人は、まるで生まれたての雛の様に 体を寄せ合いますが女性軍はガタガタと震えが止まりません。
ここを登ってしまうとパーティーを分ける事はできません。リーダーの許可を得て、ひなさんとワタスゲさんは 2人でアプローチを下山する事になりました。また、いつか挑戦しましょうネ。


天狗の岩場登攀開始です。

雪は付いていませんがアイトレなのでここでアイゼン装着です。 しかし、この寒さの中アイゼンを装着して登攀する勇気はありません。 ワタシは冬靴のまま登る事にしました(一体何しに来たんでしょうか!)。

チャーさんのビレイでみっちいさんのリードです。アイゼンを付けているとは思えないほどスイスイと着実に登っていきます。 ザイルは中間8ノット確保用に加えバックアップ用フィックスの2本体制で、安全確保は万全を期していただきました。

岩自身はアイゼンなしで登れば見た目ほど難しくなく、手がかり豊富です。でもアイゼンはただの重りとなってしまいました(^^;


みっちいさんの天狗の岩場リードをひなさんが激写されていました。
アングルから見て東峰側に少し上がった位置から撮られたのでしょう。樹氷と岩のコントラストの中 登攀するクライマー、素晴らしいです!


無事登攀完了。

チャーさん、みっちぃさん、確保ありがとうございます。 寒かったでしょう。時折ガスも発生しています。


東峰方面の縦走路が見渡せます。 いつかこの屏風の様な尾根筋を縦走する事があるのでしょうか?


根子岳山頂。

ミヤマキリシマに囲まれた狭い縦走路を手足総動員で登ったり、 少しいやらしい岩場をクリアしたら、根子岳山頂に到着です。一応記念写真を。
Photo by spミカン


天狗峰へは両サイドにミヤマキリシマが生えているので歩いているとわかりませんが 離れた位置から見ると両岸スパッと切れ落ちた完全なナイフエッジです。


こんな所で人に会うなんて。みっちぃさんのお知り合いだそうで、ニッチな世界です。 しかも2人は女性!若い!チョーかわいい!あり得ない!!

ワタシ、山が少し好きになりました(^_^


天狗峰直下の岩場を10mほど懸垂下降します。 今日の工程は時間の関係とアイトレという事で、ココを登り返してピストンで終了です。

みっちぃさんが下降地点で、「ここから下をのぞいてみて!」って言うのでミカンさんと2人でのぞき込むと スパッと切れ落ちてハングして見えない岩肌の遥か下に真っ白の樹氷が美しい。 「縦走する人はこんな所登って来るなんて、アタマおかしいよねぇ〜♪」とミカンさんと盛り上がっていると、 「何言ってんの?今からココ降りて登り返すとよ」とみっちぃさん...えェーーーーっ!!!。 まさか、そんな、タチの悪いご冗談を!

どうやら冗談では無いみたい。ミカンさんに至っては、懸垂下降のバックアップ用スリングを 既にクルクルと整理し終わって登り返す体制万全(^^;

仕方なくもう一段懸垂で降りる。腰が引けて、少しチビッたワタシの下降。


アイトレ本番開始。

ココを降りたらもう、何が何でも登り返すしかない。地形的に見てもエスケープは難しいだろう。 できたとしてもひたすら懸垂下降。 逆方向はローソク岩が見える縦走路で、あんなトコロに行く位ならココを登り返します!

みっちぃさんのビレイでチャーさんのリード開始。雪は全く付いていないし見た目は大した事なさそうだけど アイゼン装着でココ登るのはツライところ。って、貴方もアイゼン持ってきてるでしょっ! えへっ♪


ガスも切れて下界が見えてきた。気温も上がり無風なので体感温度も上がりポカポカ気分。 まぁ、登り返すしかないのだから何か食べますかぁ。
チャーさんとみっちぃさんの登攀をよそに、のん気に行動食をパクつくミカンさんとワタシ。


ローソク岩方向。

日差しも出て逆光だが樹氷が煌めき美しい。雲が切れて遠くに別のピークが...何岳だっけ?高岳?地図見ろよ!


チャーさん渾身のリードです。

青空ものぞいてきてコンディションは益々良くなっ行きました。


セカンドはミカンさんです。

中間8一本で確保。登りながらヌンチャクの架け替えが必要です。


出ました!クライマー特有のムーブです。

ミカンさんは4人中で一番小柄なため登るのは一番難易度が高いと思われます。 が、そこは孤高のクライマーspミカン、絶妙な体重移動のムーブで課題をクリアして行きます。さすがです。


ワタシのフォローです。

簡単だと思って取り付いたらチョー厳しい。冬靴の硬いソールや固定された足首が恨めしく思えます。 足場が固まらない⇒腕がパンパン⇒レストできない⇒宙吊り半泣き状態(T_T

もう、ザイルはゴボウ、ヌンチャクのスリング...つかめるモノはすべて使います(^^;
しかも最後はカンテを左に回り込み両足でやっと立ち込めるスペースに立つと 眼下にはスパァーっと切れ落ちた遥か先に美しい樹氷が...

ヒィェーっっーと分けの分からない悲鳴が辺りにこだまします。


最後はみっちぃさんのアイゼン登攀です。

ラストはヌンチャクの回収をしながらアイゼンで登ってくるので大変です。

と、ニコォーーって笑顔が...エェーっ、もう登ってきちゃったんですかぁー。何かチョッとムカつきますねぇー。 みっちぃさんの半泣きを見てみたい気がしてきました♪


最後の登攀箇所です。

特に難しいところではありませんが、万が一落ちればハイさようなら!なのでザイルを出していただきます。

眼下には素晴らしい樹氷が広がりますが、晴れ渡ると高度感が...


天狗のコルの岩場上部まで戻ってきました。

チャーさんが懸垂下降の準備してる間に振り返ってみっちいさんを写真撮影しました。 岩場に腰掛けて余裕の表情です。しかしよく断崖絶壁の上で...

こちらは振り向くのも怖くて右下に自分の指まで撮影しちゃいました(-_-;


固まってます。

逆にみっちぃさんから撮影されたワタシはこんな状態!ちゃんとセルフビレイ取ってるのに。


チャーさん、最後の懸垂下降工作中

すっかりガスも晴れ、往きの時の様な冷たい風は止んでいます。 眼下には樹氷と阿蘇の街並みが見渡せます。


最後の懸垂下降です。

ここをクリアすれば一般登山道のアプローチを下るのみです。朝とは違い穏やかな時間が流れています。


先に下山したひなさんが撮影した白ネコです。

また、来る日があるのでしょうか?


ガレたアプローチ登山道を足早に下山です。が、この時期は日も短く堰堤上部で日暮れを迎え 安全のためヘッデン(ヘッドランプ)灯して残業です。
下山すると、今頃は温泉でのんびりかなぁーと思っていたひなさんとワタスゲさん2人共登山口で 待っててくれました。遅くなってごめんなさい!

山行を終えて

指導された事

  • ザイルはアイゼンで絶対踏んではいけない。ザイルに傷が入り断裂の恐れがある。  また、登山靴でも踏まないように普段から徹底して意識する事。
  • 今回の様に懸垂下降場所が連続しザイルが複数ある場合、懸垂下降終了地点で ボケぇ〜っと待っているのではなく、先に進み別のザイルにて次の懸垂下降の 準備を行う事。目的は時間短縮。 行動時間が短くなることは早く歩いたのと同じ事で時間的な余裕ができ結果的に 山行の安全度も高まる。
  • 登攀時はザイルと足の位置を常に意識する。 足がザイルにかかる位置でフォールした場合、体が回転して頭部などを強打する 可能性があるので、これを防ぐためにザイルに足がもぐらない位置を意識する事。
感じた事
  • 備えあれば憂いなし!寒さ対策はいろいろなケースを想定して準備しておくこと。 登攀準備中は運動量が少ないので休憩時と同じで大変寒い。 今回ダウン中間着と目出し帽は使用しなかったが毛の帽子は耳が寒くなく重宝した。
  • 毎度の事ながらザイルワークは何度も繰り返し練習の必要あり。 実践では1つ1つの操作をセルフビレイ、8環落下防止手順から懸垂下降、 下降後の操作を流れとしてスムースに行うため、ギアやスリングの定位置を 含めた操作手順を自分のスタイルとして確立する事。
  • ザイルは思った以上に滑りました。ゴボウ職人のワタシは最悪は鷲掴みで 登れば楽勝と思っていたのですが、冬山で手袋を外すのがご法度の状況では 結構厳しい事が分かりました。 厳しい登攀場面での握力低下、トラブル等があった場合を想定し、パーティーに 1ヶはアッセンダーの準備が安心なのかなぁーと思いました。。

Photo by ひな , みっちぃ , spミカン and Pooh.
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